やの屋@藝祭2011


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概要
地下やの屋
夜やの屋

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矢野さんと東京藝術大学の学生がコラボレーションする企画「やの屋」。矢野さんが提示した「希望」をテーマに、若い芸大生とベテラン矢野さんが産み出す新しい表現を、藝祭の場でお披露目。

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button 地下やの屋 - 2011年9月3日(土)

buttonおしながき

  1. つながる愛
    制作:高井史子
  2. 空の向こうに
    作曲&キーボード:鷲尾百合子、尺八:黒田慧、箏:中島裕康、ウッドベース:パール・アレキサンダー、ドラムス:今井文香
  3. Re*Piano
    制作:荒井郁美・関根ひかり・森志帆・吉川浩平、演奏:榎政則
  4. Voice Candle
    制作:田中翼・堀内万佑子、指導:吉川浩平、箏:松澤祐紗、打楽器:今井文香
  5. 明日
    ピアノ:小田朋美、声:水本紗恵子・菊地裕貴・中村裕美・渡辺元子・石井千鶴、バウロン:豊田耕三、ギター:中村大史、サックス:大石俊太郎

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場所は、体育館の地下。整理券をゲットしても、番号順の入場ではないので、早めに会場前に行ったのだが、主宰者側の仕切りが悪い。好意的に捉えれば、企画の中身の準備で手一杯だったのだろうが、観客を入れるイベントなのだから、客をどのように捌くかというのも、イベントの重要な一部と捉え、もっと入念に準備してもらいたかった。結局、開場したのは予定から45分遅れ。さらに、観客を入れてからも、まだ準備作業が続いている。

冷房の無い空間にぎっしりの観客で、非常に蒸し暑い。皆のストレスが散々高まったところで、矢野さん登場。ふんわりした口調で一気に場を和ませる。さすがのオーラだ。

一つ目の企画は、舞台に飾られている三つの絵画からイメージするメロディーを、矢野さんがその場で奏でるというもの。絵画を製作した油画専攻の高井さん自身、矢野さんのファンということで、とても嬉しそうだ。一方、この絵に込められたのが、急死した恩師への想いというヘビーなテーマであることも明らかにされ、なんとも感動的な演奏になった。

つづいて、邦楽とハウスミュージックの合体。さすが芸大生。演奏のスキルが高い。普段、邦楽に接することの無い私には、見慣れない箏の奏法が繰り出されるなど、印象的だ。

三つ目は、改造と装飾を施されたピアノを矢野さんが演奏するという趣向。要はプリペアード・ピアノだが、全ての弦に電子回路を取り付けるなど、相当、凝った工夫が施されているようだ。矢野さんも、自分の指先から様々な音が出てくるのを存分に楽しんだ様子。

Voice Candleの制作者、堀内さんも矢野さんファン。舞台準備の間に製作の経緯をなどを語ってくれたのだが、その口ぶりに熱いファン魂がこもっている。アイディアの元は、カソリック系の女子中高時代に経験したクリスマスのキャンドル・サービスということだが、建築専攻の彼女には、それをどう具体化したら良いか分からなかった。そこで登場したのが、先端芸術専攻の田中さん(京大学部 → 東大大学院 → 東京藝大 というスーパーな経歴)。完成したパフォーマンスは、観客全員に配られたLEDカスタネット(段ボールに、ボタン電池とLEDを付けただけのシンプルな物)を叩くと、Kinectセンサー(ゲーム機 Xboxのオプション)がその光を認識し、サンプリングされた矢野さんの声が流れるというもの。照明を落とした会場に光るLEDと、それにシンクロするサウンド。バックで演奏する箏とパーカッションも効果的で、何とも雰囲気のある空間になった。

最後は、東日本大震災の二週間後に発表された佐々木幹郎氏の詩「明日」を、パフォーマンス集団「VOICE SPACE」の小田さん・中村さんが合唱曲に仕上げた作品。ここでは矢野さんはスタンディングで見事な歌声を披露。

主宰者側のあまりの段取りの悪さに、始まる前はどうなることか不安になったイベントだったが、いざスタートしてみると、どの演目も、非常に楽しめる物だった。さすが東京藝術大学の学生さんは、アイディアも演奏技術も、そして若い情熱も素晴らしい。始まってからの進行も決して流暢ではなかったが、そこは百戦錬磨の矢野さん。学生の未熟な部分を巧みにフォローしつつ、ご自身も存分に楽しんでいるようだった。結果、予想を超えて、面白いイベントだった。

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button 夜やの屋 - 2011年9月4日(日)

buttonおしながき

  1. 映像と即興演奏 ひよこの夢
    演奏&ピアノ:山中淳史、企画&映像:山口直哉、映像:池尻貴尚・瀬木文・姫田梨瑛・藤原僚平
  2. こころ ころころ
    声:小田朋美・水本紗恵子・山崎しし・中村裕美・中村大史、尺八&声:渡辺元子、鼓&声:石井千鶴、アイリッシュフルート&声:豊田耕三、サックス&声:大石俊太郎、マスクの制作:山崎しし
  3. ケルト朗読劇 キケと人魚
    脚本:大石佳那子、企画:中井陽介、絵画&詩:山崎千尋、制作補助:田中勘太郎、イーリアンパイプス:中原直生、フィドル:ジョンさん、他アコーディオン:服部阿裕未、ホイッスル:野崎剛右・丸山梓、バウロン:伊藤小百合、他ケルト音楽研究部有志
  4. やの屋ホカホカ音ごはん
    企画:飯田能理子・首藤健太郎、フルート:大井絵里子、クラリネット:安藤綾花、ピアニカ:田川めぐみ、パーカッション:今井文香

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二晩目の会場は、校舎内の第六ホール。予定では午後4時50分スタートだが、早めに私がホール前に行ったときには、まだ、もう一つ前の公演に並んでいる人で大混雑。聞けば、現在 40分押しとのこと。前のイベントがずっと押していたのが蓄積された結果のようだが、十分な状況説明がされないなどお客様対応の悪さが目立つ。しばらくして、前の公演のお客さんが入場し、ようやく整列。私は列の前方にいたのだが、実行委の人達がバタバタしているのが良く分かる。そのうち、衝撃の事実が判明。現在やっている公演も長引きそうで、結果、80分押し!二日間に渡り、延々と行列で待たされながら間近で見ていると、それなりに実行委や関係者の顔・名前・役割・個性などを覚えてきて、なんだか親近感というか連帯感を一方的に感じてしまい、同情してしまうのだが、それでもこの段取りの悪さは酷い。

結局、きっちり80分遅れでイベント開始。第六ホールは、かなり広いスタジオのような空間(矢野さんは「NHKのよう」と表現されていた)で、そこにパイプ椅子が並んでいる。

最初の出し物は、5人の学生が作った映像をつなげた作品に、矢野さんと作曲専攻の山中さんが二台のピアノで、ほぼ即興で音を重ねるというもの。お二人は、事前にちょっと挨拶を交わした程度で本番に臨んだそうだが、ミュージシャン同士のコミュニケーションの深さを見せつけられた。

つづいて、谷川俊太郎さんの詩を中心とした言葉のセッション。「言葉」に集中するため、出演者は矢野さんも含め、全員、仮面を着用。ポエトリー・リーディングのような、アカペラのような、そして即興演奏も交え、前衛的な試みという感じ。

三つ目は、朗読劇。漆芸専攻の大谷さんが書いた物語に、油画専攻の山崎さんが描いた絵が添えられ、朗読は矢野さん。そして、バックはケルト音楽研究部の皆さんの演奏。ケルト音楽と矢野さんとの相性の良さは、The Chieftainsとの共演などでも分かっていたが、やはり心地よい。ただ、心地よすぎて、ちょっと眠くなってしまった。

最後は、矢野さんを料理長に見立て、「希望」からイメージする言葉を料理するという趣向。要は、お客さんに「希望からイメージする言葉」を挙げてもらい、それを矢野さんが即興で弾き語り、さらに学生さんもその場で音を重ねるというもの。初めは、矢野さんの超ハイクオリティな鼻歌という感じだったが、最後には、一つのフレーズを観客にリピートして歌わせ、そこに矢野さんが別の言葉を重ねて、どんどん演奏を盛り上げていくという、即興と言うにはあまりにハイレベルな、まさに矢野マジック炸裂という状況に。面白かった。

ということで、夜も8時を回り、イベント終了。いざ、本番が始まってからも、舞台転換の度に時間がかかり、仕切りという面では、学生諸君には大反省をしていただきたい。お客様を入れたイベントをやるからには、自分たちの表現で満足するだけで無く、お客様の身になって色々と気を配らないといけないのだよ、と思いっきり上から目線で苦言を一つ。

それでも、実験的なパフォーマンスは、どれも面白い物だったし、矢野さんとの共演を終えた学生さんの充実した笑顔を見ていると、良いものを見せてもらったという思いも強い。色々な意味で、得がたい経験となるイベントだった。

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